「飲食店営業許可」と申請手続きについて

営業許可証のサンプル画像
独立開業に飲食業を選ぶ人は多いと思います。しかし、飲食店を始めるには飲食業の許可を得なければならず、それには諸々の準備が必要になります。申請に漏れや不備があると開店が遅延することにもなりますので、どのようなことが必要なのか、きちんと把握しておきましょう。

「飲食店営業許可」の概要

開業に際して許認可が必要な業種はたくさんあり、それぞれになぜ許認可制なのかの理由があります。飲食業については、不特定多数の顧客に対して飲食物を提供することで、健康被害を発生させる恐れがあります。ですから、食品衛生法の定めで、営業を行う場合は保健所長の許可を受けなければならない業種の一つとなっています。

 

飲食店営業許可は各都道府県が管轄する保健所が行います。各保健所による許認可は、都道府県が定める食品衛生法施行条例に基づいて行われますので、細部の規定は異なりますが、大枠は同じです。営業許可を受けるために必要な書類はかなり多いので、抜け漏れのないように準備しましょう。飲食店営業許可に必要な書類は、おおむね以下のものになります。

 

営業許可申請書

店舗施設の図面

付近の見取り図

食品衛生責任者の資格を証明するもの

登録事項証明書(申請者が法人の場合)

水質検査成績書(井戸水などを使用している場合のみ)

製造方法の概要(製造業の場合)

申請手数料(2万円前後 ※業種により異なります)

 

店舗施設やインフラ関連以外の要件に、食品衛生責任者の配置があります。食品衛生責任者の配置は、食品衛生法および食品衛生法施行条例により定められた義務で、営業施設ごとに1名が必要です。食品衛生責任者になるためには、以下の要件を備えていなければなりません。

 

・栄養士・調理師・製菓衛生師・食鳥処理衛生管理者・船舶料理士・ふぐ包丁師・食品衛生管理者などの資格を持っている者

・各自治体が主催する食品衛生責任者養成講習会を受講・修了した者

申請前に行う保健所への「事前相談」

保健所で事前相談をしているイメージ画像

実際に営業許可申請をする前に、重要な工程があります。それが保健所への「事前相談」です。事前相談の主な目的は、開業する店舗が許可基準に適合しているかの確認です。不適合な内容で申請しても許可は得られませんから、必要な書類をもって保健所の担当者にチェックしてもらうわけです。必要な書類とは、店舗施設の概要がわかる図面などです。

 

事前相談のタイミングは、内装工事を始める前であるべきです。もしも相談の時点で改善点を指摘されれば、その部分は必ず指示通りに変更しなければなりません。着工後の設計変更・改修は、工期・費用への影響が大きいので、それを回避し、かつ円滑に許可を得るために、店舗プランがほぼ固まったタイミングで相談するのがいいでしょう。

 

あくまでも「相談」という段階なので、店舗設計上で決めかねている点やわからないことの確認もできます。ですから、提示する図面などは、完璧なものでなくても大丈夫です。むしろ最終的な設計図面まで進めていると、もしもの場合、修正のための時間をロスすることになってしまうので、設計担当者やデザイナーに前もって事前相談のタイミングを確認しておきましょう。

営業許可申請の流れと注意点

飲食店営業許可を申請する際の流れとは、大まかに以下のようになります。

 

1.保健所への事前相談

詳細は前述のとおりです。スムーズに許可を得られるように、不明な部分などはこの段階ですべて解消しておきます。

 

2.申請書類の準備~営業許可の申請

事前相談が済んだら、改善指示などをすべて反映した形で各種申請書類を準備します。書類がそろったら、管轄保健所に営許可申請を行います。申請書の提出は、店舗施設が完了する10日ほど前に行います(自治体により異なりますので、事前に確認してください)。

 

3.店舗への確認検査

申請後一週間程度で、保健所の担当者による店舗の実地確認検査が行われます、申請内容と実際の施工状態が合っているか、事前相談時の指摘事項などが反映されているかを必ず確認しておきましょう。確認検査には原則として事業主が立ち会います。店舗の確認検査で問題がない場合、自治体によって異なりますが、一週間程度で営業許可が下ります。

 

4.営業許可書の交付

検査に合格すると営業許可証が交付されます。事前に伝えられていた営業許可証の交付日に保健所などの交付窓口に行って受け取ります。受領に際しては印鑑が必要なので、忘れないようにしてください。営業許可証は食品衛生責任者の名札と共に、店内の見やすい場所に掲示しましょう。

 

次に、営業許可を得るための注意点を見ていきます。設備に関して、保健所でチェックが入りやすい主な項目を記しました。設計時に漏れがないようにしておきましょう。

 

【厨房床の清掃のしやすさ】

衛生的な環境を保てるように、水が流せて水はけがよいなど、掃除しやすい床を選択しましょう。

 

【厨房の2層シンク設置】

厨房のシンクは2層が必須です。基準を満たさず交換、ということになると無駄な費用が発生してしまいます。そうならないように細かな規定も確認しておきましょう。

 

【厨房・トイレの手洗い場設置】

厨房にはシンクの他に手洗い場が必要になります。トイレにも手洗い場の設置が必須です。手洗器の大きさにも規定があり、それぞれ「幅36センチメートル×奥行28センチメートル」以上が必要です。

 

【厨房と客席エリアの区分け】

厨房と客席エリアの間は、扉などで区切られていなければなりません。ただし、扉があればよく、ばねで開閉するスイングタイプのドアでも可です。

 

【客席エリアに冷蔵庫等の食材置き場がないこと】

基本的に客席エリアには調理場や食材置き場があってはいけません。ドリンクのみの冷蔵ケースなどはOKの場合があるので、事前に管轄保健所に確認しましょう。

 

【冷蔵庫の温度計設置】

一般的に業務用の冷蔵庫には、庫内温度がわかる温度計が付いていますが、付いていない場合は見やすい場所に別途設置する必要があります。庫内温度を測れる後付けの温度計も市販されているようです。

 

【厨房内のふた付きゴミ箱の設置】

厨房内に置くゴミ箱は、必ず「ふた付き」のものが必要です。

 

【戸が付いた食器棚の設置】

食器をしまう食器棚には、必ず「戸」が付いていなければなりません。戸の材質は特に規定がなく、ガラス・木・ステンレスなどのどれでも問題ありません。

 

【害虫などの侵入防除設備】

店内にネズミや害虫が侵入するのを防ぐために、厨房やトイレの窓に網戸を取り付けるなどの設備対策をしなければなりません。換気扇のシャッター、排水口の金網なども同様の理由により、設置が必要です。

 

設備関連以外にも、スムーズに営業許可を得るためには、疑問点は解消しておく必要があります。また、規定を外れると飲食店以外の営業許可や届け出が必要になる場合も出てきてしまうので、無用な手続きが発生しないように気を付けましょう。

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